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2010.06.02 ...and Juliet
とりあえず、しばらく制作していた台本の第一稿が完成しました。
完成した所で没でございます(笑

眠らせておくのもあれなので、追記で全部後悔!

見るが良い、これがリアルタイム黒歴史DA!!
「...and Juliet

ジュリエット  女。モンタギュー家に代々仕える使用人の娘。20代前半。
        幼い頃からロミオと仲がよく、恋心を抱いている。
シンデレラ   女。街の花屋で働く少女、18歳から20歳。清楚で謙虚。
ロミオ     男。街の現領主。父は1年前に他界し母と屋敷に暮らしている。
        20代前半にして前領主である父にも劣らない。
        モンタギュー家頭首。
ジャック    男。20代前半。モンタギュー家に仕える使用人。
シュバルツ   男。サンドリヨン商会の若手秘書。20代後半。
ステラ     男。作家。ロミオの父の伝記を依頼されている。
召使い     男女可。屋敷に仕えている。

【1】

   薄暗い牢屋・外は大雨。重い扉の開く音。下手から泥だらけのシンデレラを連れジャック。

シンデレラ ねぇ、私何もしてないわ!お願い、話を聞いて、ねぇ。お願い!
ジャック  入れ。

   ジャック、牢を開けシンデレラを中へ入れる。

シンデレラ ――(倒れ込む)ッ!……いたい……。
ジャック  …………。
シンデレラ ねぇ、本当に何もしてないの! 信じて、ねぇ!?
ジャック  ――黙れ。
シンデレラ そんな……お願いよ、私の話を聞いて……ねぇ、ジャック――。
ジャック  黙れ! 汚らわしい!
シンデレラ ――……どうして? 何があったの……?
ジャック  貴様……よくもそんな口を……!
シンデレラ ……?

   下手からびしょ濡れのロミオとジュリエット。

ジャック  ッ、ロミオ様……。
ロミオ   ……下がっていいよ。
ジャック  しかし――(ジュリエを見て)ッ。
ロミオ   ……たいした事無い、大丈夫だよ。
ジャック  そうですか……ご無事でなによりです。
ジュリエ  心配かけてごめんなさい……。
ロミオ   それじゃ、下がってもらえるかな?
ジャック  はい。……くれぐれもお気をつけを。(シンデレラを睨み、下手へ)
シンデレラ ……ロミオッ!
ロミオ   シンデレラ……君は――。
シンデレラ ――! ジュリエット、大丈夫!?
ジュリエ  ……シンデレラ、どうして?
シンデレラ どうして……? なにがあったんですか?
ジュリエ  あなた……。
シンデレラ ねぇ!なにがどうしたの!?教えて!?
ジュリエ  ……ッ。(目をそらす)
シンデレラ ジュリエット……。
      ねぇ……教えて、ロミオ。何があったの?
ロミオ   シンデレラ……君は……ッ。
ジュリエ  いいのよ、ロミオッ!
ロミオ   ジュリエット……。
ジュリエ  ――ねぇ、シンデレラ。何があったのかは知らないわ。
      だけどね、私ずっと貴女の事親友だと思ってた、ずっと一緒にいられるって。
      ……貴女はどう思ってたか知らないけれど、ロミオとの事も応援してたのよ?
シンデレラ ジュリエット……?
ジュリエ  なのに……どうして?どうしてなのシンデ――ッ(お腹を押さえる)
ロミオ   ジュリエット!? ジャック! ジャック!!
ジャック  (下手から出てくる)どうかされましたか――ジュリエット!
ロミオ   早く、お医者様に!
ジャック  は、はいっ! さあ、私の肩に腕を回して――。
ジュリエ  ……ごめんなさい。
ジャック  何を言ってるんですか、さぁ、早く。

   ジャック、ジュリエットと共に下手ハケ。

ロミオ   君とならと……信じて……いたのに。
シンデレラ ロミオ……ッ!ロミオ!ねぇ、行かないで!ロミオ……!
ロミオ   また……来るよ。(下手ハケ)
シンデレラ ロミオ……!

   重い扉の締まる音。

シンデレラ ……一体、何が……?
     (視線を落とし、足下の水玉に目をやる。雷で牢屋が明るくなる)
      ――ッ!?(服の汚れの中に赤い模様が混じっている)(再び雷)ぇ……? 
      なに……なにこれ……? (手が目に入る)―――!!!!(手にも赤い模様)
      いや……なにこれ……なんなの……!?ねぇ、ロミオ!ジュリエット!ねぇ!ねぇ!
      ……ねぇ――!?(OFF芝居へ)

   雷の音ととも、薄暗く。下手前にステラ、サス。手に本。

ステラ   昔々、ある所に継母と姉達に虐められ、召使いのような扱いを受けている少女がおりました。
      自分を守ってくれる父はいませんでした。隣町の商館へ取引に行った帰りに土砂崩れに
      巻き込まれ、帰らぬ人となったのです。そのとたん継母達の様子は一変したのです。
      彼女は、この時初めて継母が財産目当てだったのだと気付きますが、
       彼女には、どうする事も出来ませんでした……。(本を閉じる)
      本当の物語とは人生の転落劇から始まる物ものです。
      さて、牢屋に捕われてしまった彼女の身には何が起こったのか?
      そうして――(下手へ目をやる)

   下手からジュリエット出てくる。

ジュリエ  (袖に)ええ……大丈夫。ありがとう、それじゃ(扉をしめる)。

   おぼつかない足取りで上手へ、窓から外を見る。

ジュリエ  (腹の傷を触れ)ッ……――。(手に付いた血を見る)
      ――シン……デレラ……。あ……あはは……あはははははっ。あはははははっ――!
ステラ   彼女の物語はどうしてこのような展開を迎える事になったのか?
      この物語の舞台は数週間前まで巻き戻るのであります。
      (本を見つめ、シンデレラとジュリエットに視線を送る)

   サス消え、ジュリエ、シンデレラはける。

【2】

   場所変わり中庭。ステラ、本の束を携え上手から歩いてくる。

ステラ   どう書いたら良いかなんてわかんないよー。
      他の作家に頼めば良いのに、どうして僕なんだよー!

   ジャック、上手からロミオを探しつつやってくる。

ジャック  まったく……どこへ――
ステラ   どうかしたんですか?
ジャック  ステラ様。もうお話は終わりましたか。
ステラ   ええ、終わりというか、なんというか……。
ジャック  その様子ですと、奥様に相当無茶を言われたようですね。
ステラ   まぁ……僕が書けないのが悪いんだろうけどさ。
ジャック  そう卑下なさらないでください。
ステラ   ありがとう……。そっちも大変みたいだね。
ジャック  ええ……まぁ。お花さんが退職なさったので庭もこの様ですし……。
ステラ   お花さん、やめちゃったんだ。
ジャック  ええ、お国に帰られるそうです。
ステラ   へー、そっちの方が面白い話書けそうだよ。
ジャック  なによりロミオ様を叱る方が奥様以外に居られなくなってしまったので……。
ステラ   君も大変なんだね……、頑張って。
ジャック  ありがとうございます。では、失礼致します。

   ジャック、頭を下げて下手へ、上手からジュリエット。

ジュリエ  あら? ステラじゃない。
ステラ   ああ、ジュリエットか。
ジュリエ  ああって何よ。今日も奥様に呼ばれたの?
ステラ   まぁね。
ジュリエ  どうなの?旦那様の伝記、進んでる?
      ってその様子じゃ全然のようね。
ステラ   ご名答。そもそもボクに書かせる方が間違ってるよ。
ジュリエ  確かに小説と伝記じゃぁねぇ。
ステラ   おかげで悪戦苦闘さ。今日も「誰が童話を書いてって言ったの!」って怒られたよ。
      これでも大真面目に書いたつもりなんだけどね。
ジュリエ  なになに――(本を奪い)「モンタギュー家の秘密」?
      むかーしむかし、そのまた昔のお話です。……あのね、始まり方からして間違ってるでしょ。
ステラ   んー……伝記ってそういうもんじゃないの?
ジュリエ  大体どうしてご主人様が白馬に乗ってるの?
ステラ   乗ってたじゃん。
ジュリエ  収穫祭の舞台ではね。でも本物じゃなくて仮装したジャックでしょ?
ステラ   真実なんて書けないよ。領主は馬鹿だったのかって思われちゃう。
ジュリエ  あー……ま、頑張ってね。ソレ以外の部分は素晴らしい方だったし。
ステラ   そうだね。
ジュリエ  そうだ、私も出してくれるわよね?
ステラ   え?
ジュリエ  優秀なメイドが身の回りをお世話をしており、私生活で苦労する事は無かったって、
      書いてくれるんでしょう?(ポーズ)
ステラ   あはは、そうだね。君位優秀なら出しても良いかもしれないね。
ジュリエ  そうでしょ?
ステラ   考えとくよ。
ジュリエ  ありがと。
ステラ   じゃあね、早く帰って書かなきゃまたどやされる。
ジュリエ  それはそれは。
ステラ   じゃあね。
ジュリエ  ええ、またね。

   ステラ上手へ。ロミオ、上手から出てくる。

ロミオ   (後ろを確認し)はぁ……まったく……。
ジュリエ  ……ローミオっ!
ロミオ   なんだ、ジュリエットか……驚かさないでくれよ……。
ジュリエ  なんだとはなによー。
ロミオ   別になんでもないけどさ。
ジュリエ  そういえば、貴方またバイオリンの稽古抜け出したそうじゃない?    
ロミオ   な、なんでそれを……。
ジュリエ  奥様がメガネをくいくいしながら
      「今度と言う今度は許さ無いざます!」って言ってたわよ?
ロミオ   はぁ……だいたい、この歳にもなってバイオリンだなんて――
ジュリエ  えーと……(ジャックを探す)。
ロミオ   どうかした?
ジュリエ  「次抜け出してたらジャックに伝えて頂戴」って言われてるのよ。
      あ、ちょっと、じゃっくーっ!
ロミオ   ちょちょちょっと!(ジュリエットの口を押さえ隠れる)
ジュリエ  もぐもぐもーっ!(「なにすんのよー!」)
ロミオ   逃げ出して来たんだから当たり前じゃないか!
ジュリエ  (手を外して)奥様に言いつけてやるー。
ロミオ   どうせもう怒られるのは決定済みだよ。
ジュリエ  ほんっと、貴方変わらないわねぇ……。
ロミオ   君もだろ。
ジュリエ  そうかしら?
ロミオ   そうだよ。
ジュリエ  おかしいわねぇ、私は結構いい具合に育ってますけど?(色気攻撃)
ロミオ   ……お前な。
ジュリエ  ……なによ。
ロミオ   ……なんでもないよ。
ジュリエ  ふーん(さらに色気攻撃)こんなことしちゃったり?(同じく色気)
ロミオ   ……ジュリエット。
ジュリエ  ……なによ。
ロミオ   はぁ……。
ジュリエ  ……玉無し。
ロミオ   な、た、たま――ッ!?
ジュリエ  なに?どーかしたでございますかー?
ロミオ   何処でそんな言葉を覚えて――。
ジュリエ  顔が御赤うございますよー?
ロミオ   うっ、うるさいなぁ!
ジュリエ  へへーっ(足を躓いて転けかける)――ぁっ。
ロミオ   ジュリエット――!(抱きかかえる)
ジュリエ  な……。
ロミオ   気をつけて。
ジュリエ  わ、わかってるわよ!
ロミオ   ……ん?
ジュリエ  な、なんでもないから離しなさいよ!
ロミオ   あ、ああ。
ジュリエ  し、仕方ないわね!ジャックへの密告は止めてあげるわ!
      私は何も見てない聞いてない! これで借りはチャラよ!?
ロミオ   はぁ……恩にきるよ。今日は大事な用があるんだ。
ジュリエ  用……?
ロミオ   そう。とても大切な、ね。
ジュリエ  ――ああ、そうえば。今日だったわね。
ロミオ   まあね、これから花を買いに行くけど付いてくる?
ジュリエ  ご主人様のご命令とあらば。
ロミオ   ん、じゃぁ行こうか。(上手へ)
ジュリエ  はい、かしこまりました。ご主人様ー。(上手へ)

   下手からジャック、ジュリエットを探しつつ出てくる。

ジャック  おかしいな、確かにこっちから声が聞こえたはずですが――。
シュバ   (下手から)ジャック、元気かな?
ジャック  これはこれはシュバルツ様、ようこそいらっしゃいました。
シュバ   ああ。
ジャック  本日も、例の件でお越しですか……?
シュバ   まぁね、奥様の機嫌も悪いんだ。
ジャック  ……申し訳ございません。
シュバ   君が謝る事じゃないだろう?
ジャック  しかし……。
シュバ   主人に忠実、それが使用人の勤めだとするなら君は使用人の鏡だな。
ジャック  ……ありがとうございます。
シュバ   ロミオ様は中かい?
ジャック  いぇ、先ほどからなにやら屋敷内が騒がしいようで――
シュバ   抜け出したと?
ジャック  お恥ずかしい限りですが……。
シュバ   く、くはははっ、いやぁロミオ様らしいっ。
ジャック  …………。
シュバ   ああ、失礼失礼。いやぁ、この分だと奥様の機嫌は当分直りそうも無いな、
      気が重くなるな、まったく、くはははっ。
ジャック  申し訳ございません。
シュバ   いいや、いいさ。ロミオ様はおられないのだな?よし、また出直すとしよう。
      伝えておいてもらえるかな?
      考え直していただけるのならば、我が主様が高血圧で御倒れになる前に御願いしますよと。
ジャック  かしこまりました。
シュバ   ジャック。君も体調には気を付けるんだな。く、くはははっ――。(上手ハケ)
ジャック  ロミオ様……。

   暗転。

【3】

   明転。お墓。下手から花束を持ったロミオとジュリエット。上手のロミオ家墓前まで歩きながら。

ジュリエ  あの事故からもう一年なのね。
ロミオ   そうだね。(墓前に花を添える)
ジュリエ  長かった言えば長かったけど、貴方はよくやってると思うわよ?
ロミオ   そう……かな? なんだか父上には遠く及ばない気がするよ。
ジュリエ  いいえ、そんな事無い、きっと旦那様も天国で喜んでくださってるわ
      隣町の商館との件も上手く行きそうなんでしょう?
ロミオ   まあな、あの事故で一度は頓挫したけど、なんとかここまでやって来れた。
ジュリエ  うん。
ロミオ   父上。貴方の想いは、このロミオがキチンと受け継いでおります。
      父上の果たせなかったこの願い、きっと叶えてみせます。
ジュリエ  働きぶりを、御見せ出来ないのが少し残念ね。
ロミオ   仕方ないさ、変な話だけど父が生きてたら僕はきっと怠け惚けていた
      と思うよ。モンタギュー家時期頭首なんて、気にとめた事無かった。
ジュリエ  でも、今は充分に立派な頭首であり、領主様よ?
ロミオ   ありがとう。
ジュリエ  どういたしまして、ご主人様。
ロミオ   でもここまで来れたのもジュリエットのおかげだよ。
      父の亡骸を前にして動けなかった僕を叱ってくれた。ありがとう。
ジュリエ  ――べ、別に感謝される程の事じゃないわよ。何も言われずとも、ご主人様の望む通りに
      働くのが良きメイドってものですからねっ!私は仕事をしたまでよ。
      それに自分の主人があんな顔してたんじゃ情けないったらありゃしない。
ロミオ   悪かったよ。
ジュリエ  謝らないでよ。ご主人様なんだから。
ロミオ   駄目……かな。
ジュリエ  駄目ね。
ロミオ   駄目かぁ……。
ジュリエ  まっ、これから立派な領主になって頂ければ結構ですわ?
ロミオ   頑張るよ。
ジュリエ  うん、頑張ってね。
ロミオ   父上、見守っていてくださいね。
ジュリエ  ――……屋敷に戻りましょうか。
ロミオ   そうだね。
ジュリエ  奥様、きっと怒っていらっしゃるわね。
ロミオ   はぁ……憂鬱だよ。

   下手からシンデレラ、悲しそうな表情で下手のシンデレラ家墓前へ。
   ロミオ話しかけようとするが、ジュリエットに遮られ黙る。
   シンデレラ、墓前に花を添え胸の前で十字を切る。

ジュリエ  こんにちは。またお会いましたね。
シンデレラ え――ぁ、こんにちは。確か貴女は――あっ!りょ、領主様っ!
ロミオ   領主様だなんて、ロミオでいいよ。
シンデレラ しかし……。
ロミオ   いいんだよ、他人行儀は苦手なんだ。
シンデレラ で、では……ロミオ……様。
ロミオ   ん、なんだい?
シンデレラ やはり恐れ多くて――
ロミオ   大丈夫だよ、見た所歳も近そうだし、気を使わなくて良いよ。
シンデレラ そういわれましても、やはり領主様は領主様ですし――
ジュリエ  いいのよ!
シンデレラ えっ。
ジュリエ  こんな奴に領主様なんて言葉勿体ない。
シンデレラ そ、そんな……領主様――。
ロミオ   ああ、気にしなくて良いよ。慣れてるから。
シンデレラ え、慣れてるって……。
ロミオ   まぁ、気にしなくても大丈夫だから。
シンデレラ そうですか……?
ロミオ   ところでこのお墓は――(シンデレラ家の墓へ目をやる)
シンデレラ 今日は……父の命日なんです。
ロミオ   君もお父上を……?
シンデレラ ――はい、不幸な事故でした。
ロミオ   君も事故で……? あ、いや、すまない。何か気に触ったかな?
シンデレラ えっ!いえ!そんな事は……(自分の表情を慌てて直す)
ジュリエ  でも、顔色が悪いわよ?
シンデレラ だ、大丈夫です……。ここの所忙しくて、その疲れが出ているのかもしれません……。
ロミオ   そうかい……?だったら良いけど。
ジュリエ  いや、良く無いでしょ。
シンデレラ あの、本当に大丈夫ですので……お気になさらないでください。
ジュリエ  ホンッと、デリカシーに欠ける奴でごめんなさいね?
ロミオ   じゅ、ジュリエット……。
ジュリエ  言いたい事があるならガツンと言ってやりなさい。コイツ鈍感だから全然気付かないわよ?
シンデレラ で、でも……(ロミオをチラ見)やはり領主様にそんな……。
ジュリエ  だいじょーぶよ。私が何も言わせないから。
ロミオ   まったく……。
シンデレラ (少し笑って)それじゃあ、何か言いたい事が出来たら相談させてもらえますか?
ジュリエ  まかせなさいっ!
ロミオ   おいおい……。
シンデレラ それにしても、お二人はどういう御関係なんですか?
ジュリエ  え?
シンデレラ とても仲がよろしいようですし――ジュリエットさん、でしたっけ?
ジュリエ  そうよ?
シンデレラ その……お気に触ったらごめんなさいね。
      余りにもジュリエットさんがとても使用人には見えないもので……。
ジュリエ  なっ――
ロミオ   確かにどっちが主人か分からなくなるときがあるよ。
ジュリエ  それはあんたがしっかりしないからでしょう!?
ロミオ   昔よりかは落ち着いたと思うけど?執務もちゃんとこなしているよ?ね、シンデレラさん?
シンデレラ え、ええ――。
ジュリエ  全然っよ!変わらないし執務も雑!不満たらたらよ!そうよね!?シンデレラ!?
シンデレラ あ……あ、はい。
ロミオ   というか、変わらないのは君の方じゃないかい? 子供のままだ。
ジュリエ  な、なんですって……!?

   シンデレラ控えめに笑う。

ジュリエ  な、なによ!?
シンデレラ い、いえ――(クスクスと笑い続ける)。
ロミオ   どうかしたかい?
シンデレラ その、あまりにもお二人の仲がよろしかったので、つい――。
      お付き合いが長いんでしょうね?
ジュリエ  ま、まぁ……(少し気まずそうに)
ロミオ   確かに、ジュリエットの家は代々、モンタギュー家に仕えているから物心付いた頃から
      一緒にいたよ。
ジュリエ  先代の後主人様に「遊び相手になってくれ」って頼まれたのよ。
      だから、「しかたなく」ね。
ロミオ   しかたなく……ね?
ジュリエ  な、なによ……。
ロミオ   嫌なら暇を出そうか? 僕は構わないよ?
ジュリエ  こ、困るのはアンタなんだから別にかまわ――

   シンデレラ笑う。ロミオとジュリエット、怪訝な顔でシンデレラを見る。

シンデレラ すみません――でも、なんだか羨ましいです。
ロミオ   そうかな?
シンデレラ そうですよ、お互いに幼い頃を知っていて、好きな事を言い合えるなんて素敵ですよ。
ロミオ   んー……なんだか弱みも知られてる気がするけどね。
シンデレラ でも羨ましいです、私にはそう言う方いないので…(寂しそうな目)
ジュリエ  ――そうだ、実はお屋敷の庭に植える花で悩んでいたのよ。
      もしよかったら意見を聞かせてもらえないかしら?
シンデレラ そ、そんなっ!私ごときではとても――
ジュリエ  いいえ、大丈夫よ。お店でお花の手入れをする貴女はまさに
      お花の専門家って感じだったわ。明日にでもお屋敷に来て?
シンデレラ し、しかし……領主様は――
ロミオ   いや、僕は構わないよ。他の物にもそう伝えておこう。
      ちょうどお花さんも退職された事だし。
シンデレラ お、お花さん……?
ロミオ   まぁ、専門家が屋敷にいないのは事実なんだ。是非頼むよ。
シンデレラ そう言う事でしたら……。
ジュリエ  決まりね!お仕事の後はお茶でもしましょう?あ、えーと……。
シンデレラ シンデレラ――……シンデレラと申します。
ジュリエ  よろしくね、シンデレラ。
シンデレラ こちらこそ、よろしくお願いします。

   シンデレラ、ロミオを少し見ると慌てて視線を外し、気まずそうに軽く会釈
   ロミオ、そんな様子に伺いを持つ事なく、爽やかに笑顔。
   三人会話しながら下手へはけて行く。少し薄暗くなり、上手にサス。
   ステラ、本を数冊片手に持ち、上手へ出てくる。

ステラ   こうして物語は動き始めたのです。

【4】

   ステラ、執筆作業が思うように進まず、奥様に怒られ肩を落としている。
   下手からジュリエットとシンデレラがやってくる。

ステラ   はぁ……。
ジュリエ  どうしたのよ、ステラ。
ステラ   ジュリエット、お帰り。
ジュリエ  ただいま。
ステラ   あれ?その子は?
ジュリエ  シンデレラよ、ほら街の花屋で働いてる。
ステラ   ああ、なるほど。どっかで見た事あると思ったんだ。
ジュリエ  そりゃぁ、同じ街に住んでればどこかで見た事あるでしょうよ。
      それにこの子、こんなに可愛いんだから。噂にならない訳無いわ。
シンデレラ え、ええっ、そんな……私なんて……。
ジュリエ  ああもうっ、可愛いわねぇっ!(抱きつく)
ステラ   んー……でもなんかひっかかるんだよなぁ……。
ジュリエ  なによ。
ステラ   わかんない。こう、ここらへんになにか……。
ジュリエ  おかしなステラね。そんな事より、進んでるの?伝記。
ステラ   はぁ……この通りさ(お手上げポーズ)
シンデレラ 伝記……ですか?
ステラ   ああ、そう。伝記。先代の領主様の偉大な功績を書物にしたいって奥様が、ね。
      僕としちゃいい迷惑なんだけど……。
ジュリエ  あら?仕事が貰えてよかったじゃない。
ステラ   書くジャンルが違うよ!(持っている本を見せる)
ジュリエ  あっ、この本!直ったの!?(本を一冊奪い取る)
ステラ   あっ!
ジュリエ  へぇー……。
シンデレラ なんなんですか、その本?
ジュリエ  むかーしむかし、ある所に継母に虐められてる娘が居りましたっ!
      辛い日々を送っていた娘でしたが、ある日、王子様と運命の出会いを果たすのですっ!
      ってね、昔母によく読んでもらったのよ。わーっ!よかった!直ってー!
シンデレラ 面白そうなお話ですね。でも、直ったって?
ステラ   なんかページが取れちゃったからって修復を頼まれてたんだよ。
シンデレラ そうだったんですか。
ジュリエ  ありがとうね!ステラ!
ステラ   あ、ああ、うん。
シンデレラ 凄く大切な物なんですね。
ジュリエ  うん!この本に出てくる、上下逆さまに服を来た小人とか、凄く憎ったらしいんだけど
      時々渋い顔で「ぬるい」っていって助けてくれる猫さんとかが好きでね?
      よくロミオ相手にぬる猫とダークニャンコの決闘とかやってたのよー!
ステラ   ロミオ様相手に決闘て、確かその猫、片手でダークニャンコ掴んで振り回したり、
      馬乗りになったりしてなかったっけ!?
ジュリエ  うん、してるわよ。こンな感じにっ!(ステラをヘッドロック)
ステラ   ちょ、ちょ、ギブギブギブ……!
ジュリエ  ぬるいにゃぁあああ!

   上手からロミオ。

ロミオ   おいおい、なにしてるんだ。
ステラ   ろ、ろみおさ――がぐっ。
ロミオ   ま、まさかこれは……ぬる猫とダークニャンコ…!!(青ざめる)
シンデレラ よっぽど大変だったんですね。
ジュリエ  あらま、ロミオじゃにゃい。
ロミオ   あ、ああ……その前にステラを離してやってくれないか……。
ジュリエ  うん。(ステラを投げ捨てる)
シンデレラ 大丈夫ですか……?
ステラ   ……にゃー……。
シンデレラ ……大丈夫みたいでよかったです。
ステラ   ……にゃぁ。
ジュリエ  ……にゃっ!(蹴り跳ばす)
ステラ   にゃ(濁音)……ガク。
ジュリエ  るぬいにゃぁ……。(クールなポーズ)
ロミオ   いらっしゃい、シンデレラ。
シンデレラ お邪魔してます、領主様。
ロミオ   だからその呼び名はやめてくれって言っただろう?
シンデレラ いえ、しかし……。
ジュリエ  いいのにゃ!なんにゃら、ダークニャンコ様とかでもいいんだにゃ!
ロミオ   いや、流石にそれはちょっと……。
ジュリエ  ぬるい!ぬるいにゃっ!貴様など、ダークニャンで十分だニャ!
シンデレラ 微妙ですね。
ジュリエ  ほら、シンデレラも。ぬるいにゃ!(カッコイイポーズ)
シンデレラ え、ええー……。
ジュリエ  ぬるいにゃ!(ズバッとポーズ)
シンデレラ ぁ、ぁの……(ロミオに助けを求める)。
ジュリエ  ぬるいにゃぁっ!(更にズバッとカッコいいポーズ)
シンデレラ (恥ずかしがりながら)ぬ、ぬるいにゃー……(沈黙)
ロミオ   ジュリエット……。(ちょいとどん引き)
ジュリエ  にゃ、にゃによ……(ちょっと冷静になりつつある)
ステラ   いい歳こいてなにやってんだか。
ジュリエ  うっ、うっさいわね!そんなことより!どうにゃ……どうなのよ!
      会議の方は!
ロミオ   順調だよ。
ジュリエ  (恥ずかしがりながら)そ、そう!
シンデレラ 会議……ですか?
ロミオ   うん、会議だよ。
シンデレラ あっ、すみません。聞いちゃ行けない事でしたら――
ロミオ   大丈夫、もうすぐ公式に発表する予定だから。
ステラ   (伝記を開きながら)先代領主は街の市場を仕切っているサンドリヨン商会が”場所代”と
      称して多額の支払いを強要していた上に、外の商会に圧力をかけ、この街に支店を作れない
      ようにしていた事を知って、外から第二の商会を招き入れようとた。コレは知ってるよね?
シンデレラ え、ええ……。
ステラ   だけどそれは実現されてない。両者を招く予定だったパーティの晩、
      事故に遭われてしまったからね。
シンデレラ ええ……。
ジュリエ  それを実現しようとしてるのよ。
シンデレラ ぇ?第二の商会を……外部からですか?
ロミオ   うん。ただ、下準備は父がしておいてくれたから、僕は引き継いだだけなんだけどね。
シンデレラ そうだとしても、やっぱり凄いです。
      まだお若いのに、先代の領主様の意志を継いでいらっしゃる。
ロミオ   そんな、意志を継ぐなんて大げさだよ。
シンデレラ いいえ、凄いです。領主様にお任せしておけば、きっといい街になると思います。
ロミオ   責任重大だなぁ。
ジュリエ  そうよ、皆の期待背負ってるんだからね。
ロミオ   あはは、頑張るよ。
シンデレラ その内領主様も本にして頂かないとですね。
ロミオ   僕が、伝記?よしてくれよ、まだそんな歳じゃない。
ジュリエ  そんな偉業を残すとは思えないけどね。
ロミオ   ふぅ、出来る事をするよ。
ジュリエ  頼んだわよ、領主さまっ!
ロミオ   はいはい。
ジュリエ  それにしてもステラ、なかなか伝記っぽくなったんじゃない?
ステラ   ほんと!?
ジュリエ  ええ。そうよね?
シンデレラ はい。普通に伝記だと思いましたが――
ステラ   やったぁっ!

   ジャック上手から走ってくる。

ジャック  ロミオ様!
ロミオ   じゃ、ジャック……。
ジャック  「少し休憩だ、お茶を出してくれ」と申されて何処に行かれたかと思ってみれば、
      こんな所で油を売って。
ジュリエ  ロミオー?
ロミオ   あ、あはは。やっぱり、息が詰まるんだよね。
ジュリエ  さっさと戻りなさい!
ロミオ   は、はいっ!(上手にはけようとしていったん止まる)
      シンデレラ、ゆっくりして行ってくれていいからね?
      会議が終わったら、一緒に夕飯でもどうだい?
シンデレラ そ、そんなっ!
ロミオ   じゃ、楽しみにしておくよ!(上手にはける)
ジュリエ  しっかりやってきなさいよー!
ジャック  全く……ロミオ様にはいい加減責任という物を知ってもらいたい。
ステラ   まぁ、ロミオ様らしいっていえばらしいけどね。
ジャック  ステラ様!ここにおられたのですか!
ステラ   は、はいっ。
ジャック  奥様がお待ちですよ。「話はまだ終わってないざます」と。
ステラ   あ、あはは……。
ジャック  さ、早くお戻りください。
ステラ   了解……わかったよ。それじゃ、ジュリエット、また後でね。
ジュリエ  うん。
ステラ   はぁ……憂鬱だ……。

   ステラ、ため息を付きながら上手にはける。3人それを見送る。

ジャック  さぁ、ジュリエットも仕事に戻ってください。
      泊まって行かれるお客様も居られるのですから。
ジュリエ  わかってるわよ、ジャック。
シンデレラ えっと……私は――。
ジュリエ  大丈夫よ。後の事は任せたわ。(ジャックに)
ジャック  は、はい!?
ジュリエ  ほら、お花さんが辞めちゃったでしょ?ロミオから聞いてない?スペシャリストを呼ぶって。
ジャック  ええ、伺ってはおりますが。
ジュリエ  じゃ、頼んだわ。彼女のアドバイス通りにお花を植えておいてね。
ジャック  し、しかし私には仕事が――。
ジュリエ  細かいわよ、ジャック。じゃあね、シンデレラ。また後で!

   ジュリエ、上手に小走りではける。
   後に残されたジャック呆然とその姿を見つめる。
   シンデレラどうすればいいのか分からず落ち着かない雰囲気。

シンデレラ え、えっとー……。
ジャック  全く……仕方がないというかなんというか……。ええっと、シンデレラ様……ですよね。
      ロミオ様から伺っています。「とても素敵な人を見つけた」と。
シンデレラ そ、そんなっ!
ジャック  お話に違わず、お美しい。
シンデレラ 美しいだなんて……あ、あの、その……――
      ぁ、ジュリエットさんって結構強引っていうか積極的ですよね。
ジャック  はい、おかげで昔から困らされてばかりです。
シンデレラ 昔から……ですか?
ジャック  はい、子供の頃と全く変わりませんよ。
      よく一緒に遊んで、ロミオ様と二人で踏み倒されてましたよ。
シンデレラ ジャックさん……でしたよね。
ジャック  はい?
シンデレラ ジャックさんも幼なじみなんですね。
ジャック  ええ。私の家は領主様に代々仕えてますから、物心ついた頃にはいつも三人一緒でした。
シンデレラ なんだか羨ましいですね。
ジャック  おかげさまで、退屈しない毎日です。
シンデレラ お疲れ様です。でも、どうしてジャックさんだけ敬語なんですか?
      ジュリエットさんは普通に話してますよね?
ジャック  これは……なんというか父が厳しい人でしたから。
      幼い頃からそういう風に育てられた物で……。
シンデレラ そうだったんですか。
ジャック  ロミオ様に言われて、何度か直そうとはしたのですが。
シンデレラ でも、なんだか「出来る執事さん」って感じがします。
ジャック  恐縮です。
シンデレラ ぁ、私ったらついつい……お庭の手入れですよね?一通り案内してもらって良いですか?
ジャック  はい。では、こちらへ(下手へ案内する)
シンデレラ はい。(付いて行く)

   ステラ上手から本片手に出て来る。(本は開かない)

ステラ   それからシンデレラはお屋敷に顔を出すようになります。
      最初は「領主様」とよそよそしかったロミオにも徐々に心を開くようになります……
      父を失った者同士、2人が惹かれ合うまでに時間など必要なかったのです。
      二人は出会うべくして出会った、運命の糸が巻き取られるように。

   廊下、ロミオの部屋の前。ロミオとシンデレラが下手から出てくる。
   上手、ロミオの部屋の扉。扉の前で2人止まる。

ロミオ   さぁ、ここが僕の部屋だ。
シンデレラ や、やはりいけません領主様、私こんな事――。
ロミオ   シンデレラ?2人のときはその呼び名は嫌だって言っただろう?
シンデレラ ……ロミオ。
ロミオ   ん?なんだい?
シンデレラ やっぱりだめです……私――。
ロミオ   シンデレラ。
シンデレラ で、でも――。
ロミオ   シンデレラ。
シンデレラ ……。(2人見つめ合う)
ロミオ   ――さ、中へ。
シンデレラ ……はい。

   シンデレラ、ロミオに連れられ上手中へ。
   しばらく沈黙、下手からジュリエット、本を抱えてる。

ジュリエ  (下手に)ああ、そう。じゃお願いねジャック。
      ステラもこの本ありがとうね!――ハ、ハァッ!?ちょ、ちょっと!何言ってんのよ……!
      あ、後で覚えてなさいよー!?(2人を見送ると本に視線を落とす)
      ……懐かしいなぁ……。(ペラペラとページをめくる)
      昔々、継母に虐められいた少女は花を摘みに森へと入った時、王子様と出会いましたー。
      はぁー……王子様、ねぇ……?(本を閉じる)

   しばし本を見つめ沈黙。ジュリエット、上手ロミオの部屋を向いて。

ジュリエ  ……王子様はさ、なんて鈍感なんだろーね?
      周りの皆はずっと前から気付いてるのに、どうしてアンタは気付いてくれないかなぁ……?
      そんなに魅力無い?私。それとも女として見てくれてないのかな?
      ねー、どうなの? そろそろ私も辛いんだけどなー?……――なんかバッカみたい。
      なんであんな奴の事でしんみりしなきゃいけないのよ!
      まったく……私らしく無い!私らしく無い!私らしく無い!!
      よしっ!(上手、ロミオの部屋へ向かう)

    下手からシュバルツ。

シュバ   いいかな?
ジュリエ  ワッ――!!
シュバ   ……侵害だな。
ジュリエ  しゅ、シュバルツ様! も、申し訳ございません。
シュバ   なにやら盛上がっていたようだが?
ジュリエ  な――。
シュバ   く、くはは。面白い物を見せてもらったよ。
ジュリエ  い、いつからご覧に……。
シュバ   王子様を鈍感呼ばわりした辺りから。
ジュリエ  な――ッ!
シュバ   く、くははっ。メイドと主人の恋愛か。よくある話だな?
ジュリエ  ――でっ!どういったご用件で!?
シュバ   ああ、ロミオ様にお会いしに来たのだが。
ジュリエ  ――そのようなお話は伺っておりませんが……。
シュバ   ああっ、知らなくて当然だ。
ジュリエ  ぇ?
ジュバ   急用なんだ。奥様に怒鳴られてね。
ジュリエ  ……申し訳ございませんが、取り次ぐ事は出来ません。
      また後日――。
シュバ   まぁ、そう言わないでさ。頼むよ?
ジュリエ  しかし、既に今日の予定は決まっておりますので……。
シュバ   んー……そうだな「王子様は鈍感」って話はどうしようか?
ジュリエ  ――ッ!!
シュバ   土産話としてはなかなか面白い物に成りそうだ。
ジュリエ  う、ううう……。
シュバ   さ、ロミオ様に取り次いでもらえるかな?
ジュリエ  ッ!かしこまりました!(上手、ロミオの部屋の扉へ)
      (軽く深呼吸する)――失礼します(軽く扉を開け)ぇ……?(中を覗き込み)――――。
シュバ   ん?どうかしましたか?――(ジュリエットに近づいて行く)
ジュリエ  ――――ッ。(扉を閉める)
シュバ   ん……?
ジュリエ  ……ぁ……その……。
シュバ   なにかな?
ジュリエ  ……お帰り……ください……。
シュバ   なんと?
ジュリエ  お帰り、くださいっ!(下手に去る)

   ジュリエットが去るのを確認すると、シュバルツ扉に耳を当てる。

シュバ   ――この声は……ほぅ? なるほど――く、くくく――。
      これはなかなか、く、くははっ――。(下手に去る)

   照明徐々に薄暗く。廊下の影になっている部分、上手からジュリエット。

ジュリエ  …………。(中央に座り込む)
      ねぇ……どうして……?どうして……どうして、その子なの……?
      ……どうして……私じゃ、駄目なの……? ねぇ……ロミォ……。
      なんで私の気持ち、気付いてくれないの……?
      ロミォ……ホントは、わたし……ずっと……あんたのこと……。
      ……なによ……ばかみたいじゃない……。
ジャック  (上手から声だけ)ジュリエットー?どこですかー?
ジュリエ  ……仕事……しなきゃ……。

   本を落とし、ふらふらと上手にはける。下手からシュバルツ。

シュバ   ふぅむ……なるほどなるほど。恋する乙女の純情な事――ククク。
     
   シュバルツ、不適に笑みを浮かべながら、上手にはける。
   少し照明弱くなる。ステラ、下手から出てくると本を拾い、開く。

ステラ   ――それはまさに夢のような出来事でした。毎日継母達に虐められている自分が屋敷に
      招かれ、華やかな生活を送っているのです。扱いは「一使用人」でしたが、彼女はそれで満足
      でした。少なくとも私を打つ継母や、臭いと罵る妹達は居なかったからです。

   場所屋敷の庭。
   上手からシンデレラとロミオ。少し照れくさそうにしながら歩く2人。

ステラ   この屋敷の人達は皆優しくしてくれる。昔父が生きていた頃の家を思い出しては
      一人涙を流す時もありましたが、今は落ち込めば励まし、支えてくれる友人が居る。
      そして、私を救ってくれた大切な人が居る――そう彼女は思っていたのです。

   ステラ、本を閉じ、二人を見る。

ロミオ   ……シンデレラ。
シンデレラ はい。なんでしょうか?
ロミオ   明日伝えようと思うんだ。
シンデレラ なにを、ですか?
ロミオ   母上に、君の事を。
シンデレラ え――。
ロミオ   君以外の人とだなんて、考えられない。シンデレラ、婚約しよう。
シンデレラ ロミオ様……とても嬉しいです。しかし――
ロミオ   ……家の事だね?
シンデレラ ええ……皆様には内密にして頂いていますが……。
ロミオ   余計な心配はしなくて良いんだ。
シンデレラ しかし……やはりお許しが頂けるとは思えません。
ロミオ   シンデレラ。
シンデレラ ……はい。
ロミオ   僕は君を信じている。君はそんな子じゃない。
シンデレラ ロミオ様……。
ロミオ   大丈夫、君も僕を信じて。
シンデレラ ……はい。

   ロミオ、シンデレラ下手ハケ。

ステラ   そして数日後、ロミオ様は奥様にお話をなさいました。

   照明、明るくなる。上手からロミオ、扉から飛び出してくる。
   その後に続いてシンデレラ。廊下で待っていたステラ驚く。

シンデレラ ロミオ様っ!
ロミオ   話を聞いて下さい、母上!!

   ロミオ、上手ハケ。ジュリエット下手から出てくる。

ジュリエ  どうかしたの?
ステラ   う、うん。ロミオ様がシンデレラさんとの事を奥様に……
ジュリエ  シンデレラとの事を……?
ステラ   うん。「そんな娘ととなんて認めません」の一点張りで……
ジュリエ  そう、なんだ。
ステラ   この後は僕の番だから……はぁ、気が重いよ。
ジュリエ  御愁傷様。
ステラ   はぁ……。
ジュリエ  それにしても……全く。

   ロミオ、上手から飛び出してくる。扉の締まる音。

ロミオ   母上!母上!話しを聞いてください!
ジュリエ  ロミオ。
ロミオ   ジュリエット……。
シンデレラ ジュリエットさん……。
ジュリエ  ン。奥様はなんて?
ロミオ   「貴方には相応しく無い」だってさ。何も知らないくせに。
ジュリエ  そう……。
ロミオ   母上!お願いです!少しだけでいいのでお話を聞いてください!
ジュリエ  ……真剣なんだ。
ロミオ   当たり前だよ。
ジュリエ  ――そっか。
シンデレラ …………。
ロミオ   母上、僕には彼女以外の人なんて考えられないので――

   ジュリエット、ロミオの肩に手を置く。

ロミオ   ――ジュリエット?
ジュリエ  この私に……任せなさいな。
ロミオ   ぁ……ああ。
ジュリエ  奥様。ジュリエットでございます。失礼ながら少しお言葉を……。
      あのぉですねぇ!いつまでも親馬鹿やってんじゃないですよ!?
      ロミオもいい加減大人なんです!先代の意志もちゃんと継いでます!
      貴女の可愛いロミオちゃんである以上に立派な大人なんですよ!
      それを「身分の違い」だの「まだ早い」だのごっちゃごちゃ――
      はぁぃ!?聞こえませんねぇそんな言葉!ええ、知りません!
      知りませんとも!貴女の愛情なんて!駄々こねてるのはどっちです!?
      大人になってください!大人に!なんですってぇ!?ちょっと失礼致しますわよ!?

   ジュリエット、上手ハケ。扉の開く音の後、勢いよく閉める音。

ステラ   ……す、すごいね。
ロミオ   あ……ああ。
ステラ   それにしても奥様にあんな風に楯突くなんて……。
ロミオ   は、ははは……まぁ、これが初めてじゃないんだけどね。
ステラ   そうなんだ。
ロミオ   ああ。父上が亡くなられて落ち込んでいる母上を励ました――っていうか、怒鳴ったんだ。
ステラ   え、なんで……。
ロミオ   本人曰く「うじうじしてる姿がムカついた」らしいい。
ステラ   そんな……。
ロミオ   それから母上は、何か有る度ジュリエットに相談してるみたいなんだ
ステラ   へぇ……。

    扉が開く音。上手からジュリエット。

ジュリエ  はぁ……餓鬼かっちゅーの。
ロミオ   ありがとう。
ジュリエ  どーいたしまして。
ロミオ   それで?母上はなんて?
ジュリエ  「好きにしてちょうだい。でもたまには実家に顔を見せるのよ」
      だってさ。何を勘違いしてるんだか。
ロミオ   ははは……。
ジュリエ  ありゃ、しばらくし「何も喉を通らないざますぅ」ね。
      手間かかせんじゃないわよ、忙しいのに。
ロミオ   ごめん。
ジュリエ  ほんっと、こういうは自分達でなんとかしなさいよね。
シンデレラ すみません。
ジュリエ  あなたが謝る事無いのよ。この馬鹿が謝るのよ。
シンデレラ でも……。
ロミオ   そ、すまない。ずっと迷惑かけてばっかで。
ジュリエ  ――(呟くように)ホント、良い迷惑よ。
ロミオ   ……どうかした?
ジュリエ  別に、なんでもないわよ!この馬鹿!
ロミオ   そ、そう。
シンデレラ あ、あの――。
ジュリエ  それにしても、何?婚約ぅ?二人とも、お似合いだもんなぁ?ね、ステラ?
ステラ   うっ、うん!
ジュリエ  ロミオぉ?シンデレラ、泣かせたら承知しないわよ?
ロミオ   大丈夫だよ、ね。シンデレラ?
シンデレラ そ、そんな……。
ジュリエ  わーっ!赤くなっちゃって、可愛いなぁっ!もう!
シンデレラ わっ、ジュリエットさん!やめてくださいっ。
ジュリエ  いいじゃないっ!減るもんじゃないしっ!
      ロミオが俺の物に触れるなってんならやめるけどね?
ロミオ   大きな恩が出来ちゃったからね、なにもいえないよ。
ジュリエ  だってさぁ、シンデレラぁ?
シンデレラ そ、そんなぁっ――。
ステラ   なんか……興奮してきました。
ロミオ   ……ステラ?
ステラ   な、なんでもないですっ!
ロミオ   (ジュリエットに)でも、ホント。君が友達で良かったよ。
ジュリエ  (動きをやめ)――ぅん。
シンデレラ ――ジュリエットさん。
ジュリエ  あ!ちょっと厨房行ってくる。奥様にお茶出さなきゃ!
ロミオ   え? ああ、わかった。
ジュリエ  それじゃ。

   ジュリエット、下手ハケ。

ロミオ   それにしても……本当に良かった。
シンデレラ ――ええ。
ステラ   へ?
ロミオ   ……シンデレラ?
シンデレラ はい。
ロミオ   …………。
シンデレラ なんでしょうか。
ロミオ   ……愛しているよ。
シンデレラ ――私もです、ロミオ様。
ロミオ   シンデレラ――。
シンデレラ ロミオ様――。
ステラ   はぁ、僕も愛されたいよ。
ロミオ   ……ステラ。
ステラ   なんだよ。
シンデレラ ステラ様。
ステラ   ……だからなに。
ロミオ   …………。
シンデレラ …………。
ステラ   ……わかったよ!奥様の所に行ってくるよ!
      まったく!人を邪魔者扱いして!これだからリア充は――

   ステラ上手ハケ。

ロミオ   シンデレラ。
シンデレラ ロミオ様――。

   上手からステラ。

ステラ   こうして二人は結ばれましたとさ。
ロミオ   ステラァ!空気ぃ!
ステラ   だってぇ!

   暗転。

【5】

   明転。数日後、屋敷の庭。ジュリエット花に水をやっている。上手からジャック。

ジュリエ  …………。
ジャック  ジュリエット?
ジュリエ  …………。
ジャック  ……ジュリエット?
ジュリエ  …………。
ジャック  ジュリエット!
ジュリエ  なっ!……ジャック。
ジャック  どうかしましたか? 最近体調が悪そうですが……。
ジュリエ  いいえ、大丈夫よ……。
ジャック  ならいいのですが……。私は馬車の準備をして来ますので厨房の様子を見て来て
      頂きたいのですが――?
ジュリエ  ええ、わかったわ。(上手へはけようとする)
ジャック  ――体調が悪いのなら、休んで頂いて大丈夫ですよ?
ジュリエ  大丈夫ー。(はける)

   ジャック、ため息、下手へはけようとして花に目を止める。

ジャック  おや?花が――……そういえば最近――
ロミオ   (上手から出てくる)ああ、こんな所に居た。
ジャック  ロミオ様、なにか?
ロミオ   いや、たいしたようでは無いんだ。(気まずそうに)
ジャック  は、はぁ……。
ロミオ   その……シンデレラは……最近来たかい?
ジャック  いえ、私もいま同じ事を思っていまして。
ロミオ   そ、そうか……。
ジャック  ……(ジュリエットの方向を見て)なにか、なさいましたか?
ロミオ   ば、な、なにかって?
ジャック  ……いえ、失礼しました。
ロミオ   お、おかしいことを言うなぁジャックはっ、は、はは。
ジュリエ  (上手から出て来て)……準備は順調だそうよ、ただ食材が少し足りないそうだから
      街まで行ってくるわね。
ジャック  ――は、はい。
ジュリエ  それじゃ。
ロミオ   じゅ、ジュリエットっ。
ジュリエ  ――なにか用?
ロミオ   い、いやようってほどでもないんだけど……。
ジュリエ  なんでございましょう?
ロミオ   その……花屋によってシンデレラの様子を見て来てくれないか?
      あの日から姿を見せないから、その……。
ジュリエ  分かった、見てくる。
ロミオ   頼むよ。
ジュリエ  じゃ。
ロミオ   あ、もしも家に来れそうなら――。
ジュリエ  連れてくるのね?
ロミオ   頼んだ。
ジュリエ  ……では、今度こそ行って参ります。(頭を下げると下手へ向かう)
ロミオ   ジュリエット?
ジュリエ  ……なんでしょう?
ロミオ   ……いや、なにかあった?
ジュリエ  いいえ、何も。
ロミオ   でも――
ジュリエ  なにもございません(去ろうとする)
ロミオ   だけど――
ジュリエ  なにも無いってば!
ロミオ   ジュリエット!
ジュリエ  だから――
ロミオ   彼女の事、頼むよ。
ジュリエ  ……わかったわよ。じゃ。(下手に去る)
ロミオ   …………。
ジャック  ……なにか、なさったんですね?
ロミオ   いや、ジュリエットには何もしてないよ。
ジャック  ……ロミオ様。
ロミオ   あ、いやっ、そう言う意味じゃ――。
ジャック  もうそろそろお時間ですから、私はお迎えに行って参ります。
ロミオ   じゃ、ジャック……。
ジャック  ロミオ様も。頼みますよ。(頭を下げて下手へ)
ロミオ   は、はは……。

   夕方、ロミオ家の庭。遠くで雷の音。下手からジュリエットとシンデレラ。
   シンデレラ、視線を落としながらジュリエットの後に付いてくる。
   ロミオ、ジャックからシンデレラが来たと告げられ上手から出てくる。

ロミオ   シンデレラっ!
シンデレラ 領主様……。
ジュリエ  お申し付け通り、お連れ致しましたよ。
ロミオ   ありがとう。シンデレラ……どうして顔を見せなくなってしまったん
      だい?やはり婚約の事が――。
シンデレラ いいえ、そうじゃないんです。
ロミオ   ならどうして……ジュリエットにでも虐められでもしたのかい?
シンデレラ そ、そんなことはありませんっ。
ロミオ   そっか、ならよかった。
ジュリエ  ……なんで私が虐めなきゃいけないのよ。
ロミオ   そりゃぁ、昔はよく君に虐められたからね。
      シンデレラも同じ目に合ってるんじゃないかってね。
ジュリエ  なによそれ。
      ていうか、あんたまだ話し合いの途中でしょう?出て来て良いの?
ロミオ   大丈夫だよ、少しぐらい。
シンデレラ い、いけませんっそんな……私の為に大事なお話し合いを――。
ジュリエ  ほら、シンデレラもそう言ってる。だから戻った戻った。
ロミオ   だ、だけど……。
シンデレラ 領主様……。
ジュリエ  シンデレラの身にもなってみなさいよ。居心地悪いわよ。
ロミオ   わかったよ、後でそっちに行くから、待っててくれ。
シンデレラ は、はい。
ジュリエ  そうと決まれば、シンデレラ、私の部屋に行きましょう?
      お茶を入れてあげる――(シンデレラの手を引っ張る)
シンデレラ イタッ――。(手を振りほどき右手を押さえる)
ジュリエ  え――?
ロミオ   ……シンデレラ?
シンデレラ す……すみません。
ロミオ   ――ジュリエット。
ジュリエ  わ、私はなにも――
ロミオ   ジュリエット。
ジュリエ  そ、そんなに強く引っ張っちゃった?ごめんね?
ロミオ   ジュリエット!
ジュリエ  ――ッ!(びくつく)
ロミオ   ……手を、見せてごらん。(シンデレラの手を取ろうとする)
シンデレラ ほ、本当に大丈夫ですから!(一歩下がる)
      あ、そ、そういえば今夜は用事が――すみませんっ失礼しま――

   ロミオ、下手に去ろうとしたシンデレラの腕を掴み、右手を見る。

ジュリエ  ――あ。
ロミオ   ……これは、どうしたんだい?
シンデレラ ……本当に……何も無いんです。
ロミオ   ……シンデレラ。
シンデレラ ……すみません。本当に何も……。
ロミオ   ……本当の事を言ってくれないか?
シンデレラ 実は義母に……。
ロミオ   お母様に?
シンデレラ その……。(周囲を気にする)
ロミオ   そうだね、ここじゃ話し辛いね。
シンデレラ そう言う訳では……
ロミオ   僕の部屋に行こうか。
ジュリエ  そうね、そうしましょ。ここじゃ誰が聞いてるか分からないし――
ロミオ   いや、二人だけにしてくれないか?
ジュリエ  ……え?
ロミオ   そっちの方が、シンデレラも話し易いだろう?
ジュリエ  そ、そんな。私だって何か力になれると思うんだけど――。
ロミオ   ……ジュリエット。
ジュリエ  な……なによ。
ロミオ   二人きりにして欲しいんだ。
ジュリエ  ぇ……そんな……。
ロミオ   いこう、シンデレラ。
シンデレラ あ――……ごめんなさい。
ジュリエ  ぁ……。

   シンデレラ、ロミオに庇われるようにして上手へ。ジュリエット、呆然とそれを見送る。

ジュリエ  ……なによ。なによ!なによ!なによ!ロミオの馬鹿!

   ポツポツと雨が降り始める。

ジュリエ  私……馬鹿みたいじゃない。

   雨の音が強くなる。下手からシュバルツ。

シュバ   おや、ジュリエット嬢、ご機嫌麗しゅう……泣いているのですか?
ジュリエ  ……雨よ。
シュバ   そうですか、雨ですか。ロミオ様はいらっしゃいますかな?
ジュリエ  今はお会い出来ないかと。
シュバ   ほぅ?意地でも合わせないつもりですか?
ジュリエ  ……大切なお話なんですって。
シュバ   大切な……シンデレラ嬢と?
ジュリエ  知ってたの?
シュバ   ええ、もちろんですとも。婚約のお話も伺っておりますよ。
      お似合いではないですか?ロミオ様とシンデレラ嬢。
      貴女はご存知かどうか知りませんが、彼女は名家の血筋ですよ。
ジュリエ  シンデレラが……?
シュバ   お父上が無くなられ、いまは街で働いているようですが、
      名家の一人娘。ロミオ様とも釣り合いが取れるでしょうに。
ジュリエ  ……そう、ね。
シュバ   まぁ、貴女のような使用人とは結ばれぬ運命。気を落とす事はありません。
      王子様と結ばれるのは、お姫様と相場が決まっていますから。
ジュリエ  そっか……。
シュバ   お辛いでしょうなぁ……届かぬ恋心。嗚呼、なんと切ない。
ジュリエ  …………。
シュバ   長い間思い続けた想いどうして諦める事が出来るでしょうか?
      諦めようとも諦められない、ですがそこには身分と言う大きな壁が。
      可哀想なジュリエット嬢、私が力になれるのならすぐに楽にしてあげたい。
      シンデレラ嬢の首を締めてでも――嗚呼っ、しかし私の口からは何も言えません。
      なんせ、ここだけの話、彼女は――

   大きく雷が鳴る。

ジュリエ  それ……本当?
シュバ   ――嘘などつきません。
ジュリエ  ……やっぱり、そうだったんだ。
シュバ   …………。
ジュリエ  怪しいと思ってた……ずっと。
シュバ   ジュリエット嬢?
ジュリエ  ……許せない、許さ無い。許されない。絶対に。
シュバ   くくく……まぁ、それに、貴女には――。

   上手からジャック。

ジャック  シュバルツ様。今夜は大切なお客様がいらっしゃっていますので、
      お越しいただかないようにとお伝えしたはずですが。
シュバ   承知の上で、だ。
ジャック  しかし――。
シュバ   この話の行方には、奥様も気にかけていらっしゃる。
      主に仕える者同士、わかってくれませんか?
ジャック  ……わかりました。ただし話し合いが終わるまでは――
シュバ   ああ、廊下で待ってる。さ、中に入らせてもらおうか?雨も強くなって来た。
ジャック  シュバルツ様……。
シュバ   ああそうそう、ジュリエット嬢?貴女には良い騎士(ナイト)が付いているではないですか。

   シュバルツ、上手へはける。ジャック、それを見送る。

ジャック  はぁ……。ジュリエット、一体どうしたんで――

   ジュリエット、ジャックにしがみつく。

ジャック  じゅ、ジュリエット――?
ジュリエ  ねぇ……ジャック。
ジャック  な、なんでしょう?
ジュリエ  …………(ジャックを見つめる)。
ジャック  ジュ、ジュリエット……?
ジュリエ  私のお願い、聞いてくれない?
ジャック  お、お願い……ですか?
ジュリエ  うん。
ジャック  な、なんでしょう?
ジュリエ  少しね、頼みたい事があるの。

   ジュリエット、ジャックの耳元でささやく。

ジャック  そ、そんなこと……!
ジュリエ  お願い。
ジャック  し、しかし……。
ジュリエ  これでも、駄目――?(ジャックに口づけ)
ジャック  ――――。
ジュリエ  ……続きは後でしてあげるから。
ジャック  ……ジュリエット。
ジュリエ  ん……?
ジャック  ……なんでもありません。
ジュリエ  お願い、出来る?
ジャック  ……はい。
ジュリエ  ありがとう、ジャック。

   ジュリエット、ジャックに改めて抱きつく。
   雨の音段々強くなって行く、雷も大きくなりはじめる。徐々に暗転。

【6】

   明転、薄明かり。廊下。シュバルツ、扉の前で待っている。ロミオ上手から出てくる。

ロミオ   ふぅ……。
ジュバ   こんばんは、ロミオ様。
ロミオ   シュバルツ様……これはこれは、ようこそいらっしゃいました。
シュバ   すみませんね、突然押し掛けてしまって。
ロミオ   いえいえ……商会の件ですよね。
シュバ   そうです。奥様に尻を叩かれまして。
ロミオ   それはそれは……しかし、この件は――
シュバ   わかっています。ですが、私も進行具合を把握させて頂きたいと。
ロミオ   そう申されましても――

   窓ガラスの割れる音、風邪が吹き込み、廊下のロウソクが消える。暗転。

ロミオ   なっ――!
シュバ   ロミオ様!
ロミオ   動かないでください!
シュバ   ……信用されてませんねぇ。
ロミオ   状況が状況ですから……申し訳ありません。
シュバ   わかってますよ。

   がちゃがちゃと扉を開ける音。

召使い   開かない!?ロミオ様!ロミオ様!ご無事ですか!?

   部屋の内側から扉を叩く音。

ロミオ   大丈夫だ!扉は開けるな!
召使い   ロミオ様!今の音は一体!?
ロミオ   何かが窓ガラスを割ったようだが、大丈夫。怪我は無い!
召使い   本当ですか!?
ロミオ   念のために、僕が良いというまで扉は開けるなよ!いいな!?
召使い   はい!わかりました!
ロミオ   ……最悪だな。
シュバ   ええ、全くです。
ロミオ   シュバルツ様、お怪我はありませんか?
シュバ   ええ、私は大丈夫です。ロミオ様の方こそ、本当にお怪我は無いのですかな?
ロミオ   残念ながら。
シュバ   くはは、何よりです!
ロミオ   ……本当に何も企んでいませんか?
シュバ   企んでいればさっさと刺して逃げていますよ。
ロミオ   そうでしょうが……いや、すみません。
シュバ   用心深いのは良い事ですよ。
ロミオ   そうですか?
シュバ   人は疑ってかかれ。常識です。
ロミオ   貴方の信条ですか?
シュバ   教訓ですよ、騙されない為のね。
ジャック  ロミオ様ーー!(遠くから)
ロミオ   ジャック?
ジャック  ロミオ様ー!どちらですか!?
ロミオ   ジャック!ジャック―!こっちだ!
ジャック  (上手から、明かりを持って)ロミオ様!
ロミオ   ジャック、ありがとう。(扉を背で押さえている)
ジャック  いえ。
シュバ   これですな……。(足下に転がっている木の枝を持ち上げる)
      どこかの枝が折れて飛んで来たのでしょう。
ジャック  ――ん?(外に人影を見つける)
ロミオ   どうした?
ジャック  ロミオ様!ジュリエットが刺されました!
ロミオ   な、なんだと……?(窓から見るが暗くて見えない)
ジャック  とにかく外へ!

   シュバルツに続き三人下手へ。暗転。雨と雷の音大きくなって行く。庭。
   雨の音徐々に小さくなって行き、照明FI、薄暗い。下手にシンデレラとジュリエットが倒れている。
   シンデレラの近くにはナイフ、ジュリエットは腹部から出血している。上手から三人が出てくる。

ロミオ   シンデレラ!
シュバ   これは――。
ジャック  なりません!

   ロミオ、ジャックに静止され止まる。

ジャック  彼女の仕業です。(シンデレラを警戒しながらジュリエットの傍へ)
ロミオ   ジャック……?
ジャック  ……(ジュリエットの傷を見る)。

   ロミオ、ジュリエットの傷に気付き呆然とする。

ロミオ   ジュ、ジュリエット!!(ジュリエットの傍へ)
ジャック  ……彼女が刺したのです。(ナイフに見つめて)
ロミオ   そ、そんな!そんな訳が無い!
ジャック  ……この目で見ました。
ロミオ   嘘だ。
ジャック  ……事実です。
ロミオ   嘘だ!
ジャック  ロミオ様!
ロミオ   嘘だッ!
ジャック  …………。
ロミオ   そんな……――シンデレラ……どうして……。
ジャック  …………。
ジュリエ  ぅ……。
ロミオ   ジュリエット!!
ジュリエ  ロミオ――……。
ロミオ   一体、何があったんだ?
ジュリエ  シンデレラが突然――。
ロミオ   突然……?(シンデレラを見る)
ジャック  ジュリエット、喋らないで。
ロミオ   ……頼む、何があったのか教えてくれ。
ジャック  ――シンデレラ・サンドリヨン。
ロミオ   ……ジャック?
ジャック  彼女の名前は、シンデレラ・サンドリヨンなのでは?ロミオ様。
ロミオ   ……知っていたのか。
ジャック  ええ。(シュバルツに)間違いありませんね?
シュバ   はい、大変申しにくいが……彼女は我が主の娘様です。
ロミオ   …………。
ジャック  ロミオ様。こうなるやも知れぬ事は、分かっていたはず。
ロミオ   だけど!
ジャック  現にジュリエットは刺された!
ロミオ   ――ッ。
ジャック  お認めください。彼女は我が欲が為に近づいたのだと。
ロミオ   そんな……。
ジャック  私も認めたく有りません、しかし――
ロミオ   いや……きっと何か、何かが有ったんだ。そうにきまってる。それか誰かに――
ジャック  ロミオ様。
ロミオ   ジャックもきっと見間違えたんだ、シンデレラが――
ジャック  ロミオ様!
ロミオ   ――――。
ジャック  ……彼女を牢へ。
ロミオ   ……ああ。わかった。
ジャック  よろしいですね?
シュバ   もちろんだとも。仕方が無い事だ。

   雷大きく鳴る。薄暗くなり、上手からステラ。本を片手に出てくる。

ステラ   こうしてシンデレラは囚われの身となったのです――。

   雨音と雷大きくなって行き照明FO。

【6】

   雨音小さくなる。照明FI。下手にジュリエット。ドアのノックの音。

ジュリエ  どうぞ。(上手からロミオ)……ロミオ。
ロミオ   ジュリエット……どうして、こんな事になったんだろう?
ジュリエ  ……私が知りたい。
ロミオ   ……傷は大丈夫か?
ジュリエ  ええ、それほど酷く無いみたい。
ロミオ   そうか……よかった。
ジュリエ  ……皆さんは?
ロミオ   今日は休んで頂く事にしたよ……何人かは慌てて帰られた。
ジュリエ  そう……。
ロミオ   ……。
ジュリエ  ……ロミオ、大丈――
ロミオ   ジュリエット(抱きしめる)。
ジュリエ  ぁ――……ロミオ。
ロミオ   ごめん……でも、シンデレラが……そんな……
      まだ信じられないんだ……僕は……どうしたら……?
ジュリエ  ……(優しく慰める)。
ロミオ   悪い夢のようだ……突然、こんな……。

   ドアのノック音、上手からジャック。

ジャック  ジュリエット、傷の方は――っ。
ジュリエ  大丈夫よ。
ジャック  いえ、それなら良いんです。
ロミオ   ジャック……。
ジャック  ロミオ様……。
ロミオ   僕は……どうしたらいい。
ジャック  悲しい事ですが……受け止めるしか無いかと。
ロミオ   そんな……。
ジャック  シンデレラ――彼女はサンドリヨン商会の者で、ロミオ様に取り入り、
      自分達が不利になるであろう、今回の会議になんらかの影響を与えようとした。
ロミオ   ジャック……。
ジャック  しかし、ジュリエットがその事に気付いた為に――
ロミオ   ジャック!!
ジャック  …………。
ロミオ   もう……いい……。
ジャック  ロミオ様……。
ロミオ   ……すまない。
ジャック  いえ……。お茶でもいれましょうか。多少は落ち着くでしょう。
ロミオ   ああ。ありがとう。
ジャック  何をおっしゃるんですか。私は貴方に仕える身です。なんなりとお申し付けください。
ロミオ   ジャック――。

   上手からシュバルツ、パンパンパンッと手を叩きながら入ってくる。

シュバ   くくく……美しい友情――という奴ですかな?
ジャック  シュバルツ様……。
シュバ   いやぁ、愉快愉快、実に愉快。面白い物を見せて頂きました。
ロミオ   …………。
シュバ   そんな目で睨まないで頂きたい。
ロミオ   どういうことでしょうか?
シュバ   まだ気付きませんか、ロミオ様。
ロミオ   なにをですか。
ジャック  シュバルツ様、時と場合をお考えください。
シュバ   私的にはこのタイミングが一番良いと思ったのですが?
ジャック  …………。
シュバ   失礼ですがロミオ様、少しお話がございます。
ロミオ   シンデレラの事で……ですか。
シュバ   ええ、そうです。我が主の娘様でございますから。
ロミオ   わかった。ジュリエット、無理はしないようにね。
ジュリエ  うん。わかった。
ロミオ   ジャック、すまないがジュリエットの様子を見てやってくれ。
ジャック  はい。
ロミオ   では、シュバルツ様。
シュバ   はいはい。では、ジュリエット嬢、お体にお気をつけて。
ジュリエ  ありがとう。
シュバ   では、失礼いたします。
ロミオ   後で様子を見に来るよ。

   ロミオ、ジャック上手にはける。

ジュリエ  …………。
ジャック  ……ジュリエット。
ジュリエ  ありがとう、ジャック。
ジャック  ……いえ。
ジュリエ  意外と上手く行くものね……。
ジャック  傷は……大丈夫ですか?
ジュリエ  大丈夫よ。
ジャック  別に刺さなくてもよかったのでは、他にも方法が――
ジュリエ  いいのよ、これで私は悲劇のヒロインになれた。

   部屋の隅に置かれていた本を手に取る。

ジュリエ  悪い魔女に命を狙われた娘は、王子によって救われるの。それはあの子じゃないわ、私よ。
ジャック  そうですか……。
ジュリエ  それはそうと……ちゃんとお礼しなきゃね……。

   扉の鍵を締めるとジャックに近づく。

ジャック  私は、別に……。
ジュリエ  いいの、私の気持ちだから。
ジャック  しかし……。

   ジュリエット、ジャックに抱きつき、顔を近づける。

ジュリエ  お喋りはおしまい。 ねぇ、ジャック、本当にありがとう。
ジャック  ジュリエ――ン。

   唇を重ねるとジュリエット、隠し持っていたナイフをジャックの腹に刺す。
   声をあげられないジャック、目を見開き呆然とする。

ジャック  ――ジュリエット……?
ジュリエ  証拠は消さなきゃ、ね。
ジャック  ……そんな。
ジュリエ  今まで、ありがとうね。ジャック?
ジャック  ジュリエット――
ジュリエ  なに?

   ジャック、ジュリエットを強く抱きしめる。

ジュリエ  ……ぇ?
ジャック  私はいつでもあなたの味方です。それを忘れないでいて下さい。

   ジャック、崩れる。

ジュリエ  こ、これで証拠は全部消えた。ジャックとシンデレラと繋がってたって証拠もあるし、
      これで、これで全部うまく行く。全部、うん。後は、後は叫び声をあげて……。
      ……な、なにやってんだか。最後まで利用されてたってのに、なにが
      「いつでもあなたの味方ですよ」……ばっかみたい。……ねぇ、ジャック。
      あんた馬鹿ね。ホンと馬鹿……なに……やってるんだろ……ホンと馬鹿……。
ロミオ   もう我慢出来ません!

   ロミオ、上手から飛び出してくる

ロミオ   ジャック!!
ジュリエ  ロミオ……?
ロミオ   しっかりしろ、ジャック!!ジャック!!
シュバ   (上手から出て来て)まだ待てと言ったのに……。
ロミオ   ジュリエット……何があったかは知らないけど、許されない事だってわかるよね?
ジュリエ  ……うん。
ジャック  ロミオ……様
ロミオ   ジャック!!話すな!!
ジャック  私です……私が犯人です。ジュリエットは関係ありません
ロミオ   話すな、じっとしてろ!
ジャック  私がシンデレラと企んだのです。ジュリエットが気付いたので、
      どうにかして消さなくては……と
ロミオ   わかった、わかったから
ジャック  彼女は何も悪くありません……ロミオ様。悪いのは私なのです。
ロミオ   ああ……。
ジャック  どうか、ジュリエットを、責めないでください――(意識無くなる)
ロミオ   ……ジャック?ジャック!ジャック!!ジャーック!!

【9】

   牢屋、ジュリエットが入れられ。外にシンデレラとロミオ。
   高い所ある窓から月の光が差し込んでいる。雨は上がった。

シンデレラ ……ジュリエット。
ジュリエ  ……ごめんね。
シンデレラ ……ううん。
ロミオ   訳は……教えてくれないんだね?
ジュリエ  ……ええ。
ロミオ   ……昔はよかったのにな。
ジュリエ  …………。
ロミオ   僕とジュリエットとジャックと。三人で馬鹿やって。
      母上に怒鳴られたら、ジャックに面倒事は押し付けて二人で知らん顔してた。
ジュリエ  うん。
ロミオ   ……なのに……なのに、どうしてなんだ?
ジュリエ  ……ごめん。
ロミオ   いつから……いつからこんな事に……。
ジュリエ  ごめん……ごめんなさい。
ロミオ   ……話してくれるの、待ってる。
ジュリエ  …………。
ロミオ   行こう、シンデレラ。

   ロミオ、上手にはけようとする。シンデレラ、動かない。

ロミオ   ……シンデレラ?
シンデレラ ……少し、お話がしたいの。
ロミオ   ……ああ。
シンデレラ ……先にお部屋に戻っててもらっていい?
ロミオ   (ジュリエットを一瞥して)わかった。
シンデレラ ありがとう。
ロミオ   ……(ジュリエットに)それじゃ。

   ロミオ、上手はけ。

シンデレラ ……ジュリエット。
ジュリエ  ……ごめんね、シンデレラ。こんな事になっちゃって。
シンデレラ ううん、いいの。
ジュリエ  ごめん。
シンデレラ でも……聞かせて?貴女の想い。
ジュリエ  うん。私、私ロミオの事が好きだったんだ。ずっと、ずっと前から。
      それこそ、物心付いた頃から。
シンデレラ うん。
ジュリエ  きっと将来はこの人のお嫁さんになるんだーってずっと思ってた。
      そりゃぁ、身分の差はあるだろうけどさ。そんなの気にもとめてなかった。
      どうにかなるって。だけど、初恋って上手く行かないのね。
      あいつ、全然振り向いてくれなかった。なのに、貴方には一目惚れして……。
      お似合いだと思ったわ。素直にね。けど……。
シンデレラ けど?
ジュリエ  やっぱり、我慢出来なかった。ごめん。何でアイツの隣にいるの私じゃ駄目なんだーって。
      私じゃ駄目なの?って。
シンデレラ ……うん。
ジュリエ  そしたら……こんなことに……ジャックまで巻き込んじゃって……。
シンデレラ …………。
ジュリエ  ほんと、馬鹿。馬鹿ね、私。
シンデレラ ジュリエット……。
ジュリエ  ごめんね、シンデレラ。
シンデレラ ううん。私の方こそ、ごめん。
ジュリエ  なんでアンタが謝るのよ。
シンデレラ だって……。
ジュリエ  いいのよ、あんたは幸せになれば。ホント、ごめんね?
シンデレラ 違うのよ。謝らなくていいのよ、ジュリエット。
ジュリエ  ……?
シンデレラ 謝るのは……寧ろ、私の方だから。

   扉の開く音。

シンデレラ 相変わらずタイミングのいい事。
シュバ   取り柄ですからね。具合は如何ですかな?
シンデレラ 最高ね。
シュバ   それは結構でございます。
シンデレラ さっ、てと。
ジュリエ  ……シンデレラ?
シンデレラ 状況、理解出来るかなー?
ジュリエ  ……ぇ?
シンデレラ あ、あははっ?やっぱわかんないかーっ。これだから使用人はあははっ!
シュバ   物わかりの良いのも居りますが?
シンデレラ ああ、貴方は別よ?
シュバ   知っておりますとも。
ジュリエ  ……なんで?
シンデレラ え?
ジュリエ  騙してたの……?
シンデレラ さァ?何の事かしら?
ジュリエ  あなたねぇ――!?
シンデレラ あ、そうそう。

   シュバルツ、シンデレラに本を差し出す。

シンデレラ 落ちてたわよ?
ジュリエ  へ――?
シンデレラ アンタぁ、夢見がちじゃないの?王子様が迎えにくるだァ?

   シンデレラ、パラパラとページをめくる。

ジュリエ  返して、その本を返して――。
シンデレラ 私がロミオとくっついても愛想良く振る舞う貴女。
      まるで道化(ピエロ)みたいで笑い堪えるのに必死だったわァ?
ジュリエ  お願い、返して……。
シンデレラ さっさと、お伽噺からは卒業しなきゃねぇ?
ジュリエ  お願いだから……返して。
シンデレラ あっ!そうだァ、いいこと思いついたワぁ?
ジュリエ  シンデレラ――。
シンデレラ 私が卒業させてあげるってのはどう?
シュバ   良い考えでございます。
シンデレラ それじゃァ――ジュリエット?ご卒業、オメデトウ?

    シンデレラ、本を破り。牢の中に投げ捨てる。ページが宙を舞う。

シンデレラ アハッ、アハハハッ!!ハハハッァ!?

    シュバルツ、ゆっくりと拍手。

シンデレラ よかったでちゅねーッ!?ちゃんと卒業できてぇーっ!
      あっらぁー?どうしたのォ?嬉しすぎて涙が出ちゃったのかなァ?嬉しいわァ、
      そんなに喜んで貰えてェッ。ホントぅにおめでとゥ、ジュリエットちゃん。私も嬉しいわァ!
シュバ   シンデレラ様。そろそろ戻らねば、ロミオ様がお待ちですぞ?
シンデレラ ああ、そうだったわね。行きましょうか。
      またあの男の相手しなきゃ行けないと思うと反吐が出るわ。
シュバ   もう少しの辛抱ですから。
シンデレラ わかってるわよ。それじゃァねぇ?ばいばーィ?

    シンデレラ、上手にはける。

シュバ   それでは、ジュリエット嬢?お元気で。

    シュバルツ、上手にはける。
    ジュリエット、ページを掻き集め窓を見上げる。

ジュリエ  ――――。

【10】「パターン1」


    暗転。明転。上手、本を片手にステラ。

ステラ   そして、その晩、牢屋から抜け出したジュリエットによってロミオ様は殺害される事になる。
      彼女は姿を眩ませ、現在も行方が分からない……と。

ステラ   (本をとじ)まぁ、実際の所何が有ったのか僕は知らないけど……。
      ジュリエット、君はどうしちゃったんだ?いま何処にいるんだ?

    下手からシンデレラ。

シンデレラ 完成しましたか?
ステラ   ああっ、シンデレラ様。体調はよろしいのですか?
シンデレラ ええ、この子も無事に育っています。(お腹をさする)
ステラ   それはなにより。
シンデレラ ええ、ロミオのように、立派に育ってくれる事を祈る限りです。
ステラ   ……そう、ですね。
シンデレラ そんな事よりも、伝記は。
ステラ   ええ、この通り。(本を見せる)
シンデレラ (本を受け取り、ページをめくる)なるほど……いい出来ですね。
ステラ   ありがとうございます。それにしても……僕はまだ信じられません。
      ジュリエットが……そんな事をしただなんて。
シンデレラ 彼女なりに悩んでいたようですから……。
ステラ   そう……なんですか。
シンデレラ ええ。
ステラ   それじゃぁ、僕はこれで。
シンデレラ ご苦労様でした。

    ステラ、下手へはけようとする。

ステラ   ん……?
シンデレラ どうかしましたか――

    下手から全身に布を被った人。

シンデレラ まさか、貴女――ッ!

    布を被った人、シンデレラにナイフを突き刺す。

ジュリエ  ふ……ぬるい、にゃ。
シンデレラ ――だ、だーくにゃんこ。
ジュリエ  ぬる猫よ。
シンデレラ ……そう。

    暗転。                                    終わり。

【10】「ぱたーん2」

    照明徐々に暗くなる。上手にステラ。

ステラ   僕が知ってるのはここまでだ。
      物語なんてのは誰かが誰かに伝えたお話で、結局事実なんかとはかけ離れていたりする。
      僕はシンデレラ様に依頼されてこの「伝記ロミオ・モンタギュー」を書き上げたけど、
      本当はこんな話信じちゃいない。ジュリエットの身に何が起こったのか、僕には分からない。
      当然君たちにも。だから、考えて欲しいんだ。物語の本当のストーリーを。
      そして知って欲しい、そこで何が起こったのかを。

    ステラ、本をとじる。徐々に暗転。雨の音が遠くから聞こえてくる、雷の音鳴り始める。
    舞台中央のみ明かり、ジュリエットがいる。扉の開く音。上手から人、姿ははっきりと見えない。

ジュリエ  ……ぇ……だれ?
ジャック  ……いつでも貴女の味方だと、言ったでしょう?
ジュリエ  え……嘘、そんな……。
ジャック  迎えに来ました。白馬に乗っていなくて、すみません。
ジュリエ  ……馬鹿。アンタが馬役だったでしょ?
ジャック  そういえば、そうでしたね。
                                        おっしまい♪
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